「パンチが利いている」という表現があります。辞書によると「物事に心地良さや適度な刺激があるさま」。味わいについて使われることが多く、「食べ始めのおいしさ、そのインパクトが強い」ところを表しているのでしょう。
一方、「ジワジワくる」という表現もありますね。語句として比較的新しいらしく、まだ用法が定まっていない模様。個人的には「心地よさや適度な刺激が徐々に高まっていくさま」あたりが適当ではないかと考えています。
今回訪れた「八木カレー」には、後者のジワジワくるおいしさがある。私はそう思っています。
このサイトでは「八木カレー:インドカレー」に続いての掲載となります。
ジンワリ現れる 味わいの輪郭
熊本市古城町にある店を再訪。隠れ家みたいな居心地の良さは相変わらずです。
カレーはココナツベースとオリジナルベースの2種類で、それぞれにインドカレーやエッグカレーなどのバリエーションがあります。辛さは4段階。
今回は、オリジナルベースのポークカレーを注文しました。辛さは上から2番目の「辛口」で。
大皿にターメリックライスが紡錘形に盛られ、茶褐色のカレーがかかっています。とても具だくさんで、ヒヨコ豆や枝豆のほか、ジャガイモ、カボチャ、ダイコン、オクラ、エノキダケ、カシューナッツなどを確認。メインのポークは、1~3.5センチほどの角切り肉が、ゴロンゴロンと大小8個ほど。ローリエが2枚と、クシ切りのレモンが添えられています。
レモンを絞りかけて食べます。カレーはサラリとしているけれど、複雑な深みがあって、スパイスの風味が油脂にしっかりと溶け込んでいます。ある刺激が突出している訳ではなく、混沌としている中から、おいしさの輪郭がジンワリと現れてくる感じ。旨味が強く、トマトのものらしい酸味も利いて、ご飯が進む進む。
ポークはバラ肉と思われます。軟らかく煮込まれているけれど、肉汁が保たれていて実にジューシー。さまざまな野菜類も手伝って、食べ応え充分でした。
食べ進むうち、次第においしさが高まっていく…そんなカレーです。店を出たばかりなのに、「次はどれを食べようか?」と考えている自分に気付きました。