言うまでもなく、胃腸薬は料理に入れるものではありません。
…にもかかわらず、このようにムチャな実験に及んだのは、テレビ番組で“受け”を狙いたかったから。
去る11月中旬、TBS系の生活情報番組「スーパー知恵MON」の制作スタッフから、「カレーの隠し味を番組で紹介してほしい」と出演依頼が舞い込みました。とりあえず醤油やケチャップなどを挙げてみたところ、普及しすぎているとのことで却下。そこで、意外性を狙ってヒネリ出したのが、漢方胃腸薬でした。
これにはネタ元があって、『最後の贅沢 週末はカレー日和』という本。著者の小野員裕氏は、太田胃酸とカレー粉の成分に共通点が多いことに気付き、薬膳カレーを作っています。…私も試してみましたが、太田胃酸を入れても、苦くてまずいだけ。元凶はメントールで、胃に爽快感をもたらす成分ですが、カレーには合いません。
決してまずくはならないけれど…
ならば、メントールの入っていない漢方胃腸薬は? …と薬局を探し回る私の目に飛び込んだ黄色い箱。大正漢方胃腸薬(大正製薬)でした。
主成分のうち、ケイヒはシナモンのことで、カレー粉にも入っています。茶色い粉末に鼻を近づけてみると、シナモンの甘い香りが際立っています。これならば、違和感を覚えなくて済みそうです。
レトルトカレーに振りかけ、恐るおそる食べてみました。余計な味は加わっておらず、少なくともまずくはありません。ガラムマサラのようにカレー粉の風味を補い増幅させるものではないけれど、風味をより複雑にする効果はあるようです。ただ、これを「おいしくなった」と考えるかどうかについては、意見が分かれるでしょう。
私は漢方胃腸薬を“隠し味”として番組に紹介しました。我が家で収録した映像は12月2日に放送。どうなることかとドキドキしながら見ていたところ、幸運にも評判は上々で、スタジオの出演者たちは珍しそうに食べてくれました。全国的に恥をかかずに済み、心底ホッとしたものです(だったら初めから出るなって)。