熊本県の南端に位置する水俣市。
市内の山間部に「湯の鶴温泉」という温泉地があります。かつては湯治客でにぎわったそうですが、現在はひなびた風情。
今回訪れたのは「湯の鶴迎賓館 鶴の屋」。レストランと物産館が一体となっている観光施設です。
水俣市中心部から南東へ、湯出川沿いの県道を9キロほど上っていくと、古びた建物が密集する地域に至ります。ここが湯の鶴温泉です。
温泉地の中ほどに、地域の案内板や、鶴のオブジェ、バスの停留所などが集まっている一角が。その正面に「鶴の屋」が建っています。
地元の方言で「かわいい」
立派な瓦屋根の、商家風の建物です。手掛けたのは、観光列車などのデザインで知られる水戸岡鋭治氏とのこと。和風モダンな内装で、1階にある物産館は、むしろセレクトショップに近い印象。
靴を脱いで、2階のレストランへ。畳の広間に、テーブルと椅子が配されています。メリハリの利いた照明のおかげで、どこか美術館のような雰囲気も。ふと見上げると、何本もの太い梁が目に留まりました。
ランチメニューは、ローストビーフ重や、イタリアンの魚料理など。1階の物産館のレジで、事前に注文しておく仕組みです。
私は「Summer Mojyaka Curry」を選びました。メニューには「丹精込めて作った料理長おすすめの一品」とあります。この店には元々「もじょかカレー」という名物があると聞いていたので、その“夏バージョン”なのでしょう。…ちなみに「もじょか」は、地元の方言で「かわいい」の意味。
コース料理として提供されます。前菜はキッシュや夏野菜の冷製、続いて冷たいコーンポタージュとサラダ、その次にカレーが現れました。細長い皿に、半熟卵やピクルスと一緒に盛られています。飲み物はドリンクバーを利用。
欧風のビーフカレーです。肉は繊維状に、野菜はミゾレ状に、すべて煮溶けています。フルーティーな甘味と、深い旨味が特徴的。 スパイスも利いており、オトナ向けのホットな刺激があります。
半熟卵を混ぜ込むと、味わいがマイルドに。上品そうな半面、ご飯に合う親しみやすさもうかがえました。
ひなびた温泉地にあって異彩をはなつ「鶴の屋」。
オープンは2012年。穴場的なレストランだったのですが、現在も“穴場感”は消えていない気がします。
ここはもっと知られて良いはず…デザートのチーズケーキを食べながら、そんなことを思いました。