知る人ぞ知る「マサラワーラー」。インドを愛する男性2人の料理ユニットで、全国各地を回って本格的なミールス(南インドの定食的な料理)を作り、その魅力を広めるというユニークな活動を展開しています。
このほど、私の地元である熊本県八代市で開かれると聞き、おっとり刀で駆け付けた次第です。もちろん、お腹を空かせて。
イベントの連絡を下さったのは、旧知のきょへきさん。佐賀在住のインド料理愛好家で、マサラワーラーのイベントが九州で行なわれる際、世話役をしておられるとのこと。
夏空の下、自転車をこぎこぎ、山手の妙見町にある宗覚寺に向かいました。日蓮宗の立派なお寺で、境内の大広間が会場なのです。
宗覚寺の住職を務める山口さんが、きょへきさんと知り合ったことが縁で、今回のイベントにつながったそうです。
大広間は36畳敷。そこに長机が並んでいる様子は、まるでお盆の法事みたい。
しばし待つうちに、老若男女が三々五々、30人ほど集まってきました。八代市外の参加が多いようで、遠くは鹿児島県霧島市や宮崎県高千穂町から来たという人も。みなさん、持参のノンアルコールビールを飲んだり、お土産の果物を周りの人たちに配ったり、思い思いにくつろいでいます。
やがて、カレンダーの裏紙に手書きされたメニューが、お寺の柱に掲示されました。チープながら、ガネーシャのイラストなどが達者です。
続いて長机に、料理皿となる大きなバナナリーフがズラリ。つややかな緑の葉っぱが、法事っぽい雰囲気をかき消しました。
混ぜて食べれば千変万化
食事会の始まりです。
マサラワーラーの2人、タケダさんとカシマさんがあいさつし、料理を素手で食べるコツなどを参加者へレクチャー。息もぴったりで、掛け合い漫才のよう。
続いて、マサラワーラーやきょへきさんらスタッフが、各人のバナナリーフに、料理を配って回ります。
全部で11品。メニュー表によると、ご飯(インディカ米)、サーンバール(豆と野菜の煮物)、アップラム(揚げせんべい)、ワダ(豆のドーナツ)、ゴーヤーのウルガ(スパイスオイル漬け)、カーラチャトニ(豆とトマトのタレ)、ナスのコロンブ(タマリンドの利いた酸っぱい煮込み)、冬瓜のクートゥ(豆やココナツとの炊合せ)、カボチャのエリッシェリー(ココナツ煮込み)、ゴーヤのポリヤル(炒め物)、ラッサム(ニンニクとコショウが利いたトマトスープ)。
バナナリーフの緑色を背景にした、多種多彩なインド料理の数々。しばし見とれてしまいました。
右手の指先を使って、ご飯と料理を混ぜ合わせ、口に運びます。不器用な私は、手のひらまで汁まみれになったり。それでも、舌で感じる味覚とは別種の“味わい”が、指から伝わってくるのが分かります。
個々の料理は、風味がキツかったり、クセが強かったりするのですが、混ぜ合わせると深いおいしさが生じます。混ぜる種類や量によって、味わいは千変万化し、飽きることがありません。混ぜて食べるのが面白くなり、むしろ興趣が増すばかり。
スタッフの話では「よく知られるケララ州のミールスより、少々パンチを利かせた作りです」。
この食事会では、バナナリーフから料理がなくなると、すぐに追加されます。鍋を持ったスタッフが、常時「いかがですか?」「まだありますよ!」などと言いながら長机の前を巡回しており、料理が減っていると見るや、よそいに来てくれるのです。
“わんこそば方式”というか、“逆バイキング”というか。心ゆくまで料理を堪能できる半面、急き立てられている気分にもなりました。
バナナリーフを畳んで見せるのが、“もう結構です”の合図。ご飯を3回お代わりしつつ料理を食べた後、私はバナナリーフを2つに折りました。満腹です。
いつしか周囲には、「食った食ったぁ」とばかりに、ゴロンと横になったり、大の字に寝てしまう人が。畳敷きの会場ならではの光景かも知れませんね。
マサラワーラーのタケダさんとカシマさん、世話役のきょへきさん、住職の山口さん、スタッフの方がた、ありがとうございました。
おいしくて楽しい体験でした。