2020年7月に熊本県を襲った豪雨災害。県南の球磨川が氾濫し、人吉市や球磨郡などに甚大な被害をもたらしました。
私が住んでいる八代市でも、球磨川沿いの坂本町で、多くの人たちが被災しました。
今回試食したのは「幻の荒瀬ダムカツカレー」。坂本町の物産館「さかもと館」で提供されていた名物メニューを、災害後、別の施設で“復活”させたものです。
高台に建つ「クレオン」は、水害の影響を受けていません。
この施設のロビーで、「さかもと館」が物産販売を継続。そして、併設の食堂「クレオン亭」において、ダムカレーが出されるようになったのです。
水害経て別施設で復活
坂本町荒瀬の国道219号沿い。道の駅として整備されていた「さかもと館」は、浸水などで損壊。その後、同町川嶽の「さかもと温泉センター クレオン」に、営業拠点が移されました。
「さかもと館」の道路側に、移転を示す案内板が。そこから南(上流方向)へ、自動車で5分ほど走ると「クレオン」に着きます。
復活したダムカレーは、旧バージョンとは少々異なっています。ダム構造物を模したご飯、これが以前はレンガのような直方体だったのですが、現在のものはやや低く、やや幅広くなり、わずかにカーブを描いているのです。このため、ダムと河川が広皿いっぱいに“表現”され、何とも壮大な印象に。
トンカツ6切れがご飯に立て掛けてあるところは以前と同様で、かつて荒瀬ダムに設けられていた水門を表しているそうです。ミニサラダと吸い物付き。
盛り付けは個性的ですが、料理自体はオーソドックスなカツカレー。モッタリとして濃厚な洋食風のカレーと、厚さ約2センチほどの揚げたてトンカツの組み合わせは、ボリューム満点にして食べ応え充分です。
ご飯の上に散らされているのは、地元・八代産の青ノリ。これが意外と風味豊かで、押し出しの強いカツカレーに負けていません。後口に香ばしさを残していました。
全国のダム建設地に、ユニークなダムカレーがあると聞きます。しかし、撤去されたダムにちなんだダムカレーが食べられるのは、ここだけでしょう。
今回の水害を受け、球磨川流域ではダム建設をめぐる論議が再燃。その一方で、被災した地域では、人びとが復興へと動きだしています。ダムの是非、河川の恵み、水害の怖さ、地域の再生…坂本を訪れて食べるダムカレーは、おいしさとともに、社会のさまざまな問題・課題に向き合うきっかけをもたらしてくれるはず。もちろん、無心に舌鼓を打ったって“アリ”ですよね。