1990年、長崎県島原半島にそびえる雲仙普賢岳の噴火は、まだ記憶に新しい出来事です。当時は「平成の大噴火」と呼ばれ、発生した火砕流や土石流で、島原市とその周辺の町は大きな被害を受けました。
噴火活動の終息が宣言されたのは96年。同時に、島原地域では再生行動計画・通称「がまだす計画」がスタートしました。「がまだす」は「頑張る」を意味する方言で、「災害に負けずに頑張ろう」という意味が込められているのでしょう。
その「がまだす計画」の一環として、島原市郊外に「雲仙岳災害記念館」が建てられました。火山災害の教訓を後世に伝えるための資料館ですが、噴火災害を疑似体験できるアトラクションなどを備えた観光施設の面も。災害を逆手にとって観光に結びつける、地元のたくましさが感じられます。
先日、私は「記念館」を訪れました。火山岩と水をモチーフにしたモダンな建物で、溶岩ドームが盛り上がって生まれた平成新山が遠望されます。火砕流に焼かれた民家に絶句し、火砕流や土石流を疑似体験する「平成大噴火シアター」に絶叫した後、施設内の軽食喫茶「キャンティ」へ。本来の目的は、この店の名物「溶岩ドームカレー」だったのです。
溶岩ドームは茹でジャガイモ
円い皿にこんもりとご飯が盛られ、欧風系のカレーが全体にまんべんなくかかっています。その頂点には、幼児の拳大の物体が載っており、溶岩ドームを表している様子。振りかけられたフライドオニオンとみじん切りのパセリは、火山岩や火山灰でしょうか。表面を覆う火砕流のような白い筋は、生クリーム。まるで平成新山のジオラマです。ミニサラダ付き。
中辛程度で、荒々しい見た目とは裏腹に、食感はとてもクリーミー。やや塩気がキツく感じられるのは、生クリームのせいかも。牛肉などの具は別に火を通し、後からカレーをかけるという、なかなか凝った作りです。溶岩ドームの正体は茹でジャガイモ半個で、食べやすいよう4等分に。ボリューム満点で、まさに“ひと山”平らげた気分がしました。
「ご当地カレー」という言葉は、このカレーのためにあるようなもの。島原ならでは、そこで食べるからこその溶岩ドームカレーなのです。