地方をあてもなくドライブしていたりすると、「なぜ、こんな所に!?」と首を傾げてしまうような代物に遭遇することがあります。それは数年前に能登半島の突端で見かけた古い本屋だったり、海沿いの寒村に掲げられたパソコン教室の看板だったりするのですが、熊本県水俣市の山奥でタイカレーを食べさせる店に出くわした時、私は久しく忘れていた驚きを覚えました。
その店は、水俣市久木野の地域振興施設「愛林館」の食堂です。山と樹木に囲まれた三角屋根の建物で、地元の農産加工品などの販売も行っています。
熊本から車で2時間以上かけて訪れたのは、「おいしいカレーが食べられる」という情報をキャッチしたから。結論から言うと、本当においしいカレーが食べられます。タイと和風、インドの3種類があり、私はタイとインドを食べました。
寒漬やビワゼリーもイケる
タイカレーは緑がかったグリーンカレー。インドカレーはオレンジ色のチキンカレー。それぞれ「寒漬」と呼ばれる地元名産のダイコン漬と、ビワのゼリーが付いています。
タイカレーは具沢山で、牛スジ肉のほか、タケノコやナス、インゲン、ピーマンなどが入っています。なかなか辛口ですが、ココナツミルクのおかげでクリーミーな味わい。肉をはじめ材料の旨味がよく出ていました。
インドカレーの方は、メニューの説明によると“カレー大王”として知られるジャーナリストの森枝卓士が編み出したレシピに従って作ったそうです。タマネギの甘味が良く出ていましたが、結構スパイシーながら、私には甘すぎた。水俣のタマネギは高品質なため、通常の分量で使うと甘味が強くなりすぎるのではないかと思われます。
サラリとしたインドカレーもさることながら、タイカレーのおいしさは特筆に価します。寒漬もビワゼリーも素朴なおいしさで好感が持てました。食べるだけのために行っても良いほどですが、どうせ行くなら、おいしいカレーを作れる特産のタマネギを買って帰りましょう。タマネギペーストなどが販売されていました。
ところで、なぜタイなのか? 施設の人に聞いてみたところ、「熊本では珍しいが、日本人に違和感のない味だから」。とてもストレートな回答で、ドラマチックな背景を勝手に想像していた私は、少々ガッカリ(勝手な私が悪いのですが)。他に、タイ風炒飯などのメニューもありました。