熊本県南部を流れる球磨川。長さ115キロに及ぶ流れは、いくつかのダムによってさえぎられています。
下流の八代市坂本町にあるのは、水力発電を目的に建設された「荒瀬ダム」。1955年の竣工で、老朽化などから撤去されることになりました。日本国内では初のダム撤去となるため、技術面からも環境面からも全国的に注目されているそうです。
その荒瀬ダムを“表現”したカレーが、今回試食した「荒瀬ダムカレー」。坂本町の国道219号線沿い、「道の駅 坂本」内にある物産館「さかもと館」のレストランで食べられます。
さかもと館は、木材とコンクリートが組み合わされた、ナチュラルモダンな建物。明るい雰囲気のレストランは、カウンター5席、4人掛けのテーブルが6卓。だご汁やうどんなどが食べられます。
「ゲートオープン」と言いながら
物産館の各所に、荒瀬ダムカレーをPRするポスターが。そこには食べ方まで書いてあり、「『ゲートオープン』と言いながらお食べ下さい」とのこと。荒瀬ダムカレーの撤去工事は、本来の清流が復活する地元にとって、喜ぶべき“祝賀行事”なのでしょう。
特異な形状のカツカレーが出てきました。ご飯は直方体に成形されており、高さ約5センチ、幅約14センチ、厚さ約3センチ。そのご飯に、8つにカットされたトンカツが立てかけてあります。トンカツの大きさは縦10センチ、横18センチほど。これらの周りを、濃いブラウンのカレーが取り囲んでいます。荒瀬ダムがご飯、トンカツがダムの水門、カレーが球磨川を表している模様。ご飯の上部には青ノリが載せられ、脇には福神漬けが少々。ミニサラダ付きです。
食べ始めに、小声で「ゲートオープン」と言いました。礼儀として一応。
日本風の素朴なビーフカレーです。粘度が強く、甘口に近いマイルドな味わい。牛肉やニンジン、タマネギの細片が入っています。
トンカツは食べ応えがあり、揚げたての衣が香ばしくてサクサク。ボリュームたっぷりでした。
一般的なカツカレーの盛り方を変えただけのメニューではあるけれど、それだけに、荒瀬ダムの地元でなければ売り出せない“オンリーワン”の魅力が生まれています。このカレーを食べることで、ダム撤去を疑似体験するような面白さも感じられる。話題を呼んで人気メニューに育っているそうですし、これはアイデアの勝利ですね。