「カレーは辛くなきゃ」とは私は思いません。辛さは要素のひとつでしかなく、ホットな刺激に頼らずとも、おいしいカレーはたくさんあります。
ですが、辛くておいしいに越したことはないでしょう。辛さが味わいの一部として魅力を発揮しているカレーは、納まりの良い満足感を抱かせてくれるものです。
そんなカレーを出す店が「トプカ」。数店あり、本店は東京都千代田区、神田須田町の裏通りにあります。
古びた洋食屋の風情で、入口脇に立つコック姿の人形が目を引きます。壁際にカウンター6席、テーブルが5卓18席。厨房でインド系らしい人々が働いているのが見えます。
ゆで卵をどうするべきか…?
メニューは「欧風」と「インド」に分かれており、カツカリーからマトンカリーまで十数種類。私はインド風のムルギーカリーを注文しました。
肉や野菜やゴロゴロと入ったスープ状のカレーで、トウガラシと見られる細粒が浮いています。カレーに囲まれるように、紡錘形に盛られたご飯。ゆで卵とトマトスープが、別容器で付いています。
カレーは塩気が利いており、あっさりとした口当たり。刺激は一般的な“辛口”を上回るものの、独特のキレがあって、後味はさわやか。ご飯が進みます。
鶏肉はジューシーで軟らか。野菜はニンジンとピーマン、ナス、ジャガイモで、いずれも素揚げされています。ゆで卵をどうするべきか迷いましたが、スプーンで崩しながらカレーに混ぜ込んでみたところ、味わいがマイルドになって面白く食べられました。
食後、額の汗をぬぐいながら飲むお冷のうまいこと。こんな時は、「カレーは辛くなきゃ」との考えに傾きそうになってしまいますね。