探訪の穴関東地方

孤高のスタイル保つ【ムルギー:ムルギーカリー】

ムルギー:ムルギーカリー

 多種多彩に存在するカレーでも、「インド系」や「洋食系」などに分類できます。北海道発のスープカレー、北九州発の焼きカレー…出現した当初は珍しくても、やがて模倣したり、改良を加えたりする店が現れ、ひとつの大きなジャンルを形成するまでに至るのです。
 ですが、中には“ワン・アンド・オンリー”も。真似のできない味や、強い印象のあるスタイルによって、他店の模倣を許さず、孤高を保ち続けているカレーです。

 その代表格が、東京・渋谷の「ムルギー」。にぎわう道玄坂にある、古びたレンガ造りの店です。創業は昭和26年。どこか風格を感じさせるたたずまい。

 外の猥雑な街並みと対照的に、店内は時間が止まっているようなセピア色の雰囲気。テーブル席のみで30席程度。“純喫茶”にも似た、落ち着いた調度で統一されています。

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表現できない不思議な魅力

 カレーは「ムルギーカリー」のみ。ほとんどの客は、これにゆで卵を付けた「玉子入り」を注文している模様。私も注文…と言うか、店の人から「玉子入りムルギーですか?」と訊かれたので、うなずくだけで済みました。

 外見からして“ワン・アンド・オンリー”です。きれいな三角形を成すご飯は、高さ約10センチも屹立。その“ふもと”に、焦茶色のカレーが湖のように広がっています。ゆで卵の輪切りが1個分7切れ並べられ、上にケチャップらしい赤い筋が1本。ご飯の脇に添えられたペーストは、チャツネでしょう。

 ご飯とカレーを、一緒にひと口。カレーはオレンジ色の油脂に覆われていますが、見た目と違い、サラリと軽い口当たり。ご飯に合う、深い旨味が特徴的です。辛さは甘口に近く、スパイスの風味も控え目で、全体的にマイルド。鶏肉とタマネギの砕片が確認できましたが、具としては一歩引いている感じ。…カレーという“枠”の中で、すべてが渾然一体に溶け合っている印象です。これに、ゆで卵をスプーンで崩して加えると、黄身によってマイルドさが強まり、白身によって食感に変化が出て、何とも不思議な味わい。

 フルーティーなチャツネを舐めつつ、ペロリと平らげてしまいました。あっさりと胃袋に収まり、何皿でも食べられそうな気分。言葉だけでは表現できない、不思議な魅力が秘められたカレーでした。

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