全国的にも装飾古墳(彫刻や彩色などで装飾された古代墳墓)が多いという熊本県には、装飾古墳専門の博物館があります。
この施設にはレストランが併設しており、名物はカレー。古墳の博物館で出されるだけに、古墳にちなんだカレーなのです。
熊本県の北部、山鹿市鹿央町の岩原。国道3号線を西へ外れた中山間地に、「熊本県立装飾古墳館」が建っています。
本館の手前に、木製のドーム型施設が並んで2棟。その片方のドームがレストランで、「やすらぎ館」と書かれた看板が掛かっています。
天井の高い、広々とした空間。木材を三角形に組み合わせた、半球状の天井がユニークです。テーブル席や小上がりなど、合わせて50席以上はありそう。
食べながら発掘作業を疑似体験
メニューにはだご汁や高菜飯など、素朴な郷土料理が並んでいます。どれもおいしそうでしたが、ここは迷わず、目当ての「岩原双子塚古墳・発掘カレー」を注文。
何とも印象的なビジュアルのカレーが出てきました。広皿を満たすカレーのただ中に、ご飯が古墳っぽい形に盛られ、中央にラッキョウが載っています。レストランのパンフレットによると、ご飯でできている前方後円墳の大きさは20センチほどで、実際の岩原双子塚古墳を500分の1スケールで再現したもの。ミニサラダや果物の小鉢、ドングリクッキーなどが付いていました。
カレー自体は、オーソドックスな洋食風のビーフカレーです。マイルドな味わいの中に、フルーティーな酸味が利いていて、これは地元産のナシなどが使われているためと思われます。スパイスの刺激は、中辛より弱めでしょう。
紫がかったご飯は、古代米や赤米などのブレンドで、モチモチとした食感が特徴的。シャベルのミニチュアみたいなスプーンを使って食べ進むうちに、やがてご飯の中から、唐揚げの切れ端や、カボチャの煮物のカケラが“出土”しました。食べながら古墳の発掘作業が疑似体験できるのです。なかなかに凝った趣向ですが、他の料理の余りを埋め込んでいると見られる、そのあたりのいい加減さもまた楽しい。
岩原双子塚古墳に限らず、いろんな古代遺跡や埋蔵遺物がカレーに応用できそうですね。「ピラミッドカレー」とか「始皇帝陵墓カレー」とか…。スコップのスプーンでほじくりたいなぁ。