例えばラーメンに比べると、カレーの世界には“名物店主”みたいな存在が少ないように思えます。料理の腕前もさることながら、人間的にもユニークで、マスメディアとの相性が良い…そんな人物。
ですから、「ナイルレストラン」を経営するG.M.ナイル氏は、希有な人物と言えるでしょう。日系インド人で、老舗レストランの2代目。褐色の肌に、派手なシャツ。顔写真はレトルトカレーのパッケージにも出ています。
店舗は、銀座4丁目の昭和通り沿い。こぢんまりとした店構えで、昔ながらの洋食屋っぽい雰囲気です。1階は20席ちょっと、2階席もある模様。でっぷりと太ったインド系とみられるオジサンが接客し、合間にナイルさんが顔を出して愛嬌を振りまきます。
徹底的に混ぜ合わせて
ランチ時間帯の店内を見た限りでは、客のほとんどは、ランチの定番、ムルギーランチを食べているようです。私も、店に入った途端、オジサンから「ムルギーランチですか?」。もちろん、うなずきました。
ステンレスの大皿に、カレーとターメリックライス、そして野菜類。明るい色合いのカレーには、骨付きの鶏モモ肉がドドンと1本入っており、オジサンが骨をフォークで手早く外してくれます。
炒めタマネギをベースにした、あっさり味のカレーです。ホットな辛さが“前衛”に、シャープな辛さが“後衛”にある印象。肉はホロホロと軟らかく、噛み締めると繊維質の中から旨味がジュワッ。野菜類は、マッシュポテトとグリンピースとキャベツを炒め合わせたもので、モッタリしたジャガイモがボリュームを、シャキシャキとしたキャベツがアクセントを、それぞれカレーに加えています。これら野菜類が、やや物足りなさのあるカレーを“補強”しているようです。
ムルギーランチは、皿の中身をスプーンで徹底的に混ぜ合わせるのが、おいしい食べ方とされています。最初はカレーや野菜を個別に食べていた私ですが、途中からグチャグチャにかき混ぜてしまいました。見た目は悪いけれど、やはり、混ぜ合わせた方がはるかにおいしくなりますね。