カレー専門店チェーンの「CoCo壱番屋」(ココイチ)。その展開は全国ばかりか海外にも及び、カレー好きはもちろん、そうでなくても、知らない人はほとんどいないでしょう。
しかし、小冊子『ココイチ』については、現在では知っている人のほうが少ないかも知れません。
これは「お客様とCoCo壱番屋を結ぶ小冊子」として、ココイチ各店で無料配布されていた季刊誌です。期間限定の新メニュー紹介を中心に、読者投稿や連載マンガ、コラムなどが掲載されていました。
お客様とCoCo壱番屋を結ぶ…
私が知る限りでは、1998年の冬に創刊され、2002年の春まで14号が出ています。1~9号はA6判の左綴じ14ページ、10~13号は新書判の右綴じ14ページ、14号は新書判の四つ折りでした。
先日、自宅を大掃除していたところ、かつて愛読していた『ココイチ』を保管したファイルが見付かりました。懐かしい記憶が呼び覚まされ、一冊一冊を読み返してみた次第です。
1998年冬号 創刊号の巻頭は、冬期限定の新メニューです。「ふろふき大根」「ひじき煮」「カキフライ」が紹介されています。 脱サラした青年がココイチオーナーを目指して奮闘する、連載マンガ「ココイチへの道」がスタートしました。主人公・小々山壱郎の運命は? |
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1999年春号 紹介されている限定メニューは「れんこんはさみ揚げ」「菜の花」「ホタルイカ」です。 ココイチで店頭販売されている製品をアレンジしたレシピを紹介する「華麗なグルメ」というコーナがあり、今回は「カレー豆腐」「カレーモッチーズ」が載っています。 |
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1999年夏号 限定メニューは「キムチレバー」「ちくぜん煮」、そして「うなぎ蒲焼き」は丸ごと1尾が横たわる豪華版(1200円!)。 「メニューランキング ベスト10」という企画があり、1位は1日約18950食が出るという「チーズカレー」でした。2位「ロースカツ」、3位「やさい」と続いています。 |
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1999年秋号 限定メニューは「紅いもコロッケ」「肉じゃが」「さんま竜田揚げ」の3種です。 「マイココイチ」という企画では、「ディープなココイチファンが編み出した」として、カレーにマヨネーズやメープルシロップをかける食べ方が紹介されています。 |
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1999年冬号 限定メニューは「すき焼き」「おでん」、昨冬に続いての「カキフライ」です。 ココイチファンの“生態”を紹介する「ココイチ マニアックス」という企画では、ファンを「実食派」「コレクター派」「投稿派」「入社派」に分類。イラストが多用され、見応え充分です。 |
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2000年春号 限定メニューは「キスフライ」、昨春に続いての「れんこんはさみ揚げ」と、さらにバージョンアップした「菜の花筍カレー」です。 連載マンガ「ココイチへの道」では、店員として働く主人公・小々山壱郎が、来店客へ納豆カレーの魅力を熱く語っています。 |
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2000年夏号 限定メニューは「トマトとアスパラ」「にんにくの芽と牛レバー」「里いもイカ煮」、昨夏に続いての「冷製パンプキンスープ」です。 夏号ということで、キャンプ向けのレシピを紹介。ココイチの持ち帰り商品を使った「網焼きポーク カレー風味」「鮎のホイル焼き」などが載っています。 |
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2000年秋号 限定メニューは「鮭フライ」「さつまいものかき揚げ」、昨秋に続いての「肉じゃが」です。 今号は「芸術の秋特集」として、読者から寄せられたイラストや川柳が、4ページにわたって紹介されています。 |
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2000年冬号 限定メニューは「マカロニグラタン」、昨冬に続いての「カキフライ」「すき焼き」です。 連載マンガ「ココイチへの道」は最終回。努力を重ねていた小々山壱郎は店長に昇格、やがてオーナーになることができました。 |
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2001年春号 10号から判型やデザインが変わりました。併せて、歳時記やエッセイなどが始まり、編集方針が少々ハイソサエティな方向へシフトした模様。 限定メニューは「あさり」、昨春に続いての「キスフライ」「菜の花筍」です。 |
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2001年夏号 公募されていた「夏の冷たいカレー」の入選レシピを誌上発表。冷たいスープカレー「Bubuカレー」がグランプリに選ばれ、実際に2カ月間発売されました。 限定メニューは「夏のフルーツ」「豚キムチ」、昨夏に続いての「トマトとアスパラ」「冷製パンプキンスープ」です。 |
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2001年秋号 ココイチ700店舗達成記念キャンペーンとして、ハワイ旅行プレゼントを実施。当選してハワイ観光を楽しんだ、幸運な人たちのお礼状が紹介されています。 限定メニューは「栗とかぼちゃ」「しいたけ肉詰め」、昨秋に続いての「鮭フライ」です。 |
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2001年冬号 前号よりページ数が2ページ減少。それに合わせ、エッセイなどの各コーナーが縮小されています。 限定メニューは「ココイチ大提案」として、和風だしを利かせた「カレーうどん」と、懐古的な「ライスカレー」の2種類。季節感などではなく、スタイル自体を大きく変えたカレーを打ち出しています。 |
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2002年春号 パンフレットのように折りたたまれた形状の冊子になってしまいました。読者からのイラストなどを紹介する投稿コーナーと、歳時記コーナーが、かろうじて残っています。 前回に引き続き、期間限定メニュー「ココイチ大提案」として、韓国風の「ダッカルビカレー」と、インド風の「チキン・キーマカレー」をリリース。ココイチのさらなる“挑戦”が続きます…。 |
『ココイチ』が担っていた役割は、今ではSNSなどが代行しているのかも知れません。
ですが、実店舗を訪れなければ入手できないフリーペーパーというスタイルは、“具体的な物”として情報に触れている実感を、読者にもたらしてくれます。
自宅近くにあるココイチのカウンターで、『ココイチ』の最新号をめくりながら、好きな惣菜を何種類も載せたカレーを食べているひとときが最高にシアワセ…そんな時期が、私にはありました。
世紀の変わり目に読まれていた『ココイチ』は、文字どおりに「お客様とCoCo壱番屋を結ぶ小冊子」だったと私は思います。