私の住む熊本県八代市は、目立たない地方都市ですが、なかなかにユニークな店があります。本町1丁目にある洋菓子店「スノーマン」も、そのひとつ。
四季折々のおいしいスイーツもさることながら、細かな要望に応じて作ってくれるオリジナルケーキが、実に見事なのです。無理難題さえ喜んで引き受ける遊び心、それを支える柔軟で奇抜な発想、ケーキとして実現させる技術…もう感服するばかり。
そこで、自分の誕生日(1月20日)に際し、私は「カレーなケーキを作って下さい」と依頼しました。
カレーなケーキ…注文した私自身、明確なイメージはありません。かつて自分の結婚式で「ウエディングカレー」を披露した経験はあるものの、洋菓子店が作るからには、違う物になるはず。店のマスターと個人的に仲良くさせていただいていることもあり、不躾ながら「『スノーマン』の歴史に残るケーキを」と念を押したものです。
「うおおっ!!」と驚くシロモノが
果たして、予想を大きく裏切る(良い意味で)ケーキが完成しました。箱からケーキを出した瞬間、「うおおっ!!」とのけぞったものです。
写真をご覧下さい。直径18センチ。誰が見てもひと目で分かる…これは「カレーなケーキ」以外の何物でもありません。
全体が皿に見立てられ、縁に沿ってグルリと線を引いて、一部に「天竺食堂」。波形に細く絞り出したクリームでご飯を形成し、その半分に、カレーを模したフルーツソースがかけてあります。中には“具”としてモモやイチゴの角切りが。脇に福神漬けよろしく添えられているのは、イチジクらしきドライフルーツでした。
カレーとご飯の境目あたりに、ピスタチオで緑の彩り。これは、私が経営に関与しているカフェで出す野菜カレーを模したもので、実際はカボチャの種。カフェのカレーを食べたことがあるマスターの、嬉しい心遣いです。
このケーキをオフ会で披露したところ、一同そろって驚愕。みんな、しばし無言で見とれていました。
切るのがためらわれましたが、やはりケーキは食べてこそ。ひととおり鑑賞し、写真を撮って切り分けました。フルーツ本来の味わいを活かした、上品な甘さ。外観はカレーでも、中身はおいしいケーキでした。