
一時期、全国を席巻した“激辛ブーム”。収束したかに見えますが、エスニック人気やダイエット熱に隠れ、“激辛”は一種の価値観として生き延びています。
「カレーの本質は辛さのみに非ず!」などと偉そうに言っている私ですが、それは“若くない”ことの裏返し。人間的に落ち着いたつもりの現在でも、正直、激辛には一種のロマンを感じます。一般人が尻込みする破壊的に辛いカレーを、事も無げに平らげて見せる…「イカすぜ」と思う自分を否定できません。
大人げないことを百も承知で、かつてのロマンを求めて再挑戦。併せて“激辛”によって我が心と体に何が起こるのかを記録してみました。
熊本市には激辛カレーが食べられる店が数軒あり、今回訪れたのは御幸笛田の東バイパス沿いにある「渡里夢」。カレー者の間では評判が良く、喫茶店風の明るい清潔な雰囲気です。
カレーの辛さは5段階で、最高の「5番」はノーマルに比べて辛さ50倍。お店の方の話では、辛味スパイスの量が50倍分になるということでした。ちなみに、激辛挑戦者には、記念写真と書き放題の色紙をサービス。さらに、平らげるとソフトドリンクのオマケがあります。また、渡里夢はウェブサイトを運営、激辛カレー挑戦者の写真を毎月掲載しています。
食べている自分をセルフリポート
分類上は洋食系のビーフカレー。サラダの小鉢が付きます。普通レベルはおいしそうな黄色ですが、私が注文した「5番」は赤茶けて、ご飯に「キムチの素」がかかっているよう。香りはツーンと刺激的で、嗅いだだけで涙が出そうに…。
腕時計のストップウォッチで計りながら食べたところ、平らげるまでに要した時間は14分強。
以下の表に、食べ終わるまでの私の“悲喜こもごも”を、経過ごとにまとめてみました。食後、思わずクリームソーダを注文してしまいました。
経過 | 心身への影響 |
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食べる前 | 体温36度8分。お冷やで口を湿らせる |
食べ始め | ひと口目では辛さが感じられず、「楽勝かも」と安堵 |
20秒 | 口の中いっぱいに辛さが広がり、安堵感が消し飛ぶ |
1分 | 額に汗の玉がポツポツと浮き出る |
2分 | 唇とその周辺がヒリヒリしてくる |
3分 | 胃のあたりに何か熱い塊を感じる |
4分 | 鼻の奥がムズムズし、ほどなく水っ洟が |
6分 | 指先がかすかにしびれてくる |
7分 | 額の汗が垂れ始める |
9分 | 「何故こんなものを食べねばならないのか」と疑問が浮かぶ |
11分 | 胃袋全体がギュッと収縮したような不気味な感覚 |
12分 | 3分の2ほど食べ、早くもサービスのウーロン茶が出る |
13分 | 喉の奥に焼けるような痛み。目尻には涙 |
14分 | 平らげる。少々せき込んだが、達成感が込み上げる |
食べた後 | ウーロン茶を一気飲み。そのせいか、体温は36度4分 |