カレーの穴 curry-no-ana.com

ここは“カレー者”たちの秘密養成所。7つの穴でカレーを極めろ!

LA CASCADE:走る豚 ポークカツカレー

贅沢すぎるカツカレー(福岡県福岡市)

LA CASCADE:走る豚 ポークカツカレー
 ページ上でナンバリングはしていませんが、今回で「探訪の穴」が50店舗を達成。節目となる記念の意味を込め、贅沢なカレーを食べることにしました。ちょうど、福岡県福岡市の「西鉄グランドホテル」にあるフレンチレストラン「LA CASCADE(ラ・カスカドゥ)」で、「至高のカレー」と銘打った1万円のカレー企画を実施中。記念として食べるには格好です。

 この高価なカレーは「走る豚 ポークカツカレー」「カナダ産 活オマールカレー」「近江牛 ビーフカレー」の3種類。経済的にも物理的にもすべてを食べることは難しいので、私はカツカレーを選びました。庶民的なカツカレーに1万円の値を付けるなんて、空前絶後でしょう。オマール海老は近年では珍しい食材とは言えませんし、近江牛ならステーキにする方がうまい…とも考えたのです。


 1日10食限定、2日前までの完全予約制。その通りに注文し、当日、私は期待に胸を高鳴らせながら、店を訪れました。福岡市では比較的グレードの高いホテルで、レストランはすっきりと清潔で明るい雰囲気。水が流れ落ちる人工池に面した席に座りました。1人客なので、緊張してしまいます。

 やがて、ウェイターが大きな盆を持ってきました。タマネギやニンニク、白米や肉塊などが、丸ごと載っている。「これはいったい…?」と困惑する私へ、ウェイターは材料をひとつひとつ示しながら説明を始めました。カレーが用意できるまで、客の期待を膨らませる趣向なのでしょう。私は「はぁ、はぁ…なるほど…」とうなずくばかり。端から見ると、恥ずかしい光景だと思われます。

 タマネギは兵庫県産、ショウガは高知県産、ニンニクは青森県産を厳選した、いずれも一級品とのこと。米は熊本県のブランド米「森のくまさん」で、熊本県民である私は、品質が高いことを知っていた上に、コストパフォーマンスが高い(つまり贅沢ではない)ことも知っていました。
 今回の“キモ”である豚肉「走る豚」は、これも熊本県の菊池市産です。広い土地で放し飼いされているために健康で肉質が良く、週の出荷は5頭という貴重品。後日、テレビ番組「どっちの料理ショー」で取り上げられて話題になったことを知りました。

 ヨーロッパスタイルの濃い生ビールを飲んでいると、前菜の盛り合わせが出されました。コンソメのムースにキャビアが載っていたり、プチトマトにエスカルゴが詰めてあったり、小ぶりながらもなかなか豪華。その分、カレーへのコストが減るのかな…などと心配してしまう、さもしい根性の自分がいます。

 続いて、カレーが大皿で登場。グリーンサラダと薬味(ピクルス、ラッキョウ、ドライフルーツ)付き。大皿にはご飯が紡錘形に盛られ、その脇に、8つにカットされたトンカツが、断面を上にして整然と並べられています。厚さは1~1.8センチ程度。断面から見える肉、その中心部に残るほのかなピンク色が、何とも食欲をそそります。

 ソースポットのカレーをご飯にかけ、まずひと口。粘度がとても高く、なめらかな舌触り。上品な味わいながらも意外と辛口で、フルーティーな甘さの中から、シャープな刺激が立ち上がってきます。ただ、味にもうひとつ深みが足りない気が…。
 次にトンカツ。ひと口目は、そのまま食べてみました。素材の味を活かすため、揚げるのではなく、フライパンで焼いてあっさり目のカツにしてあるそうです。薄くて香ばしい衣の中に、無数の繊維質が感じられます。それでも筋張ってはおらず、前歯でザックリと噛み切れるのが気持ち良い。くさみ皆無の脂身には、甘さと錯覚してしまいそうな強い旨味があり、いつまでも噛み続けていたくなります。
 深みが足りないと思われたカレーでしたが、カツと一緒に食べると、引き立て役に徹していることが分かり、かえって好ましい。カツカレーとしてのトータルな完成度は、非常に高いと言えるでしょう。

 食後に、デザートとコーヒーが出ました。1万円は、カレーを含めたコース料理の値段なのです。

 ウェイターに聞いたところ、平日でも8食は出るそうです。1番人気は、見栄えのする活オマールカレー。ただ、発売後2週間を過ぎて、次第にカツカレーの人気が高くなっているとか。私と同じことを考える客がいるのかもしれません。

 至高のカレーは10月限定の企画。ですが、売れ行きによってはレギュラー化も検討するそうです。福岡の新たな名物カレーとなるでしょうか?