三井港倶楽部:特製カレーライスセット | カレーの穴 curry-no-ana.com

三井港倶楽部:特製カレーライスセット

ゴージャス空間でカレーを(福岡県大牟田市)

三井港倶楽部:特製カレーライスセット
 カレーは意外と“ゴージャスな空間”も似合います。これは日本に紹介された当初の姿が、英国風の高級洋食だったから。老舗の洋食屋に行けば、“高貴”だったころのカレーに出合えます。とは言え、それは料理だけ。雰囲気まで含めた往時の高級感を演出できる店となると、もはや函館の名店「五島軒」など数軒しかないでしょう。

 幸運にも、私が住んでいる九州には、その数少ない1軒があります。今回訪れた福岡県大牟田市の「三井港倶楽部」です。


 ここは明治41年に建てられた、三井財閥の迎賓館。三池炭坑を抱えた地元の発展とともに、国内外のVIPを迎え入れていたそうです。炭坑業界の斜陽で存在意義がなくなった今は、レストランとして営業、パーティーウエディングなどで人気があります。

 切り妻屋根を組み合わせた2階建ての洋館は、やや古めかしいものの、一朝一夕には生み出せない落ち着いた優美さがあります。真鍮のドアノブ、赤い絨毯、分厚いカーテン、漆喰の壁、シックなシャンデリア、真っ白なテーブルクロス、ビロード張りの椅子、木枠の窓から見えるのは、芝生に松を植えた和洋折衷の庭園…私のような庶民には、極度の緊張を強いられる空間です。キョロキョロしながら「あの暖炉はちゃんと煙突につながっているぞ」「油絵の下に作者名のプレートが付いているからレプリカじゃなさそうだ」などと卑しいことばかり考えていました。

 オーソドックスな洋食料理が中心ですが、メニューには「特製カレーライスセット」があります。東京あたりの高級カレーと比べれば、良心的な価格と言えるでしょう。注文すると、テーブルにカレー入りのソースポット、ご飯を盛った皿、ミニサラダ、福神漬けとラッキョウとレーズン入りの小皿が並びました。

 カレーはもちろん欧風。トロみはありますが、小麦粉の重さは感じられません。野菜や果物が大量に煮溶けているようです。やや辛口。甘味と酸味が利いたフルーティーな味わいで、建物と違い、こちらは今風の軽さがあります。角切りの牛肉が数個入っていました。
 食後にコーヒーとアイスクリームが出てきました。アイスは脚の高い銀色の器に入っており、牛乳と卵の味がする懐かしい味わい。

 過ぎ去った“大正ロマン”の幻を垣間見られたような気がして、少しだけワクワクしました。おいしいカレーも食べられて、満足の一言です。

後日談 経営が変わり、「旧三井港倶楽部」として再スタート。ゴージャスな空間は健在です。